名古屋地方裁判所 昭和45年(ワ)2810号 判決
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〔判決理由〕代位弁済による根抵当権一部移転の附記登記手続と引換えに本件手形金債務を履行するとの抗弁は、(イ)本件為替手形は、被告が訴外株式会社栗本興業に他より融資を受けしむるために引受けたものである、(ロ)右訴外会社と原告との間には、手形割引手形貸付契約および同契約上の債権を被担保債権とする根抵当権設定契約が存し、同根抵当権の設定登記がされている、(ハ)右訴外会社は、原告から本件為替手形の割引を受けた、(ニ)したがつて本件為替手形金債務につき、被告は実質上右訴外会社の保証人に準ずる地位にあり、「弁済を為すに付き正当の利益を有する者」に当るから、右債務の履行と引換えに原告の有する根抵当権の一部移転の附記登記手続を求める、というものであるが、仮に右(イ)(ロ)(ハ)の事実が認められ、したがつて被告において本件為替手形金の支払いをすることが実質上本件手形の被融通者である訴外会社の原告に対する本件手形買戻債務を弁済したことになり、その結果被告は訴外会社に求償権を取得することになる、としても、この抗弁は(一)担保物件の消滅手続と弁済とは引換履行の関係に立たない(抵当権設定登記の抹消に関し、最高裁判所昭和四一年九月一六日第二小法廷判決、判例時報四六〇号五二頁その他)ことや弁済による代位は弁済の効果であることを考えるなるなら、代位による抵当権移転附記登記手続は弁済と引換履行の関係にはないと解されること(したがつて被告は、弁済を条件とする抵当権移転附記登記手続を求める反訴請求をすればよいのである。)(二)弁済による代位というのは本来弁済により消滅すべき抵当権などが、第三者弁済の結果として債権者に移転するものであるから、本件手形金債務の弁済により、原告の有する根抵当権が一部被告に移転するためには、右弁済により原告の有する根抵当権がその限度で一部消滅する関係になければならないところ、もし原告が債務者である訴外会社に対し根抵当権の極度額を超える債権を有しているとするなら(弁論の全趣旨によると本件はかかる事例のようである。)右弁済により原告の訴外会社に対する債権額が極度額以下になるのでなければ原告の根抵当権は部分的にも消滅する理由がないのであるから(尚債権者が極度額を超える債権を有する場合、当該根抵当権は債権者、債務者間に債務の残額があるかぎり、それを極度題まで担保するものであることにつき、最高裁判所昭和四一年一二月八日、民集二一巻一〇号二五六一頁。)被告は前記(イ)、(ロ)、(ハ)の事実の主張だけでなく、この点の主張をすべきであるのにこれをしていないこと、(三)代位弁済による根抵当権の移転が生ずるためには、与信契約が解約され被担保債権が確定し、根抵当権が普通抵当権に転換したことが前提となるが、被告はこの点の主張をしていないこと、の三点よりして主張自体失当である。(笹本忠男)